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排水処理 納入ストーリー

第1話 この仕事をやり始めたきっかけ

サラリーマンだった私がなぜこの業界に入ってきたのかを語らせていただきます。

忘れもしません。平成7年1月17日5時47分、マンションの8階なのに背中をトントントンと振動が伝わってきたかと思うと、「ドン!!」と背骨を突き上げる振動に、思わず「ヤバい!」とあと10日で2歳を迎える長男の上に覆いかぶさっていました。そうです。阪神淡路大震災でした。東京で3年間暮らした経験のある私は、震度5まで体験しておりましたので、寝る部屋には鏡台しか家財道具を置かないようにしており、倒れてくるものは無かったのですが、あまりにも電燈が揺れるので、咄嗟にそうした行動をとったのでしょう。

当時は、姫路に住んでいたので、神戸ほど大きな被害は無かったのですが、すぐさま、これは大変なことが起こった!と身内に電話をかけました。地震直後は、電話も通じ無事を確認できたのですが、それからは、津波こそ無いものの、今の東北大震災と似たような状況でした。震災後2週間は、まったく仕事にならず、ずーっと興奮している状態が続きましたが、車を運転中にふと「今まで30年間生きてきて、なにしてたんやろ!こんな有事になんの力も無いやんか!」と自分の実力の無さを痛感しました。

そして、当時「大一産業株式会社」という神戸に本社がある会社の姫路支店に勤めておりましたが、中堅でぬるま湯に浸かっていた自分を恥ずかしく思い、「何か行動しなくては!」と、思い立ったように地震の2か月半後の3月末には会社を退職し、復興のため建築関係の仕事に携わっている会社に再就職しました。そこで、建築のド素人だった私は、これでは仕事にならないと、毎夜独学で勉強し平成11年には、一級建築施工管理技士の資格を取得することができました。その後、しばらくして退職した大一産業さんから、Tホテルの厨房排水処理の曝気装置と配管の設計施工を協力して欲しいとオファーが入ったのです。

資格を取ったといっても施工管理で具体的な設備工事は、まったく分かりませんでしたから、一から勉強でした。現場を確認しに行った際、いきなり「帰らせてください!」と言いかけました。なぜなら、ホテルの地下2階に当たる薄暗い処理設備の前に辿り着いたときに、なんとも不気味なガスマスクが三つ入口にぶら下がっていたのです。それほど、硫化水素が発生している状況でした。

しかし、覚悟を決めて入った瞬間に、「えらい嫌気状態ですね!」と言ったところ、「えっ!水処理知らないのに嫌気状態だって分かるの?」とその場の関係者に不思議そうにされました。私は、趣味で園芸をかじっており、土いじりをしていたものですから、嫌気は処理上よくないということくらいは判別がついたからです。「それなら話は早い!すぐに曝気設備を設計してよ!」ということになった訳です。

したがって、当初は単なる設備の設計者として、散気管のメーカー数社から資料を取り寄せ、設備設計に入ろうとしたのですが、どのメーカーも決められた設計基準や設計概念が無く、「製品は提供するから、どうぞご勝手に」とまで言われてしまう始末でした。それは、設置後の自分たちのリスクをヘッヂするための防御策とは思いましたが、あまりにも無責任だと思い、大一産業さんと共同で散気管を作ろうということになりました。


見よう見まねで作成した、散気管(散気管 アクアブラスターの原型モデル)を処理槽に入れて、ブロワで空気を送ったところ、水面の油膜は無くなるわ、臭気は無くなるわで、偶然にも予想をはるかに超えた現象が起きました。しばらくすると、処理数値も安定して、それまで使用していた加圧浮上も必要が無いのではないかという話になり、それ以来加圧浮上装置は使用されなくなりました。加圧浮上槽から発生する年間の汚泥回収費だけで、1,000万円以上と聞かされていましたが、その費用がかからなくなったのです。もちろん、それに伴い硫化水素の発生も皆無になりました。

このことをきっかけに、神戸市内の一流ホテルOから、「下水の腐敗したような臭いが、宴会室やスイートルームに上がってくるから何とか解決してほしい」と連絡が入りました。ホテルOと言えば、超VIPや有名人の結婚式も行われるホテルなので、臭いが上がってくるなど、決して許されるはずもなく調査してみますと、処理水槽内にバッキレーターという、ポンプで水を掻き回しながら、エアを送り込むという立派な装置が入っていたのですが、Tホテルと同じく水面には油の層が形成され、強い悪臭を漂わせていました。(このとき、「排水は低い方へ流れるけれども、臭気は上へ上へと登っていく」という極めて当たり前のことを気付かされたのでした。)ただ、そんな機械的で、使用動力が大きい装置が入っているのに、うちの散気装置が役に立つのか、不安な部分も多々ありましたが、信じて設置してみますと、結果は1日で判断できました。

そうです。硫化水素や脂肪酸が含まれる下水の腐敗臭は、まったくと言っていいほど無くなってしまったのです。散気管 散気管 アクアブラスターが水中に酸素を供給し、撹拌する力が、バッキレーターを上回ったからです。その後も、このホテルの地区は、排水の汚染程度で数段階で累積的に「下水道使用料金」なる、いわゆる罰金が課せられるのですが、その当時、年間で数百万円支払っておられましたが、散気管 アクアブラスター設置後は、下水道排水放流基準値以内に収まり、罰金を支払わなくてもよくなりました。それだけ余分なコストが削減できたのです。

このように、2ヵ所の著名なホテルで成功したため、「これは、ひょっとするとひょっとするんではないか」と思い、なぜ処理が進んだのか、ウインドウズ95がまだ発売されていなく、それほどパソコンが普及していない時代に、ようやく少しずつ発達してきたインターネットを活用して、原因を探ったことを思い出します。

上記のように、当初は本当に結果オーライでしたが、その後も研究と経験を幾度も重ねて、失敗と成功を何度も繰り返すことで、現在の散気管 アクアブラスターシステムの設計概念が構築されていったのです。

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