散気管とは何か
製造業界には欠かせない設備の一つに「散気管」があります。散気管はさまざまな現場で利用されており、近年は種類も増えてきて、より利便性がある高性能の製品が開発されています。ここでは、散気管の構造と種類そして役割について解説します。
散気管についての基礎知識
散気管とは、一言でいうと水を浄化するために空気を放出する管であり、管には空気を送り込むエアポンプがつながっています。したがって、機械全体は「散気管装置(または散気装置)」と呼ぶのが正しい用法ですが、現場では「散気管」だけでも装置そのものを指すことが多いです。
散気管装置は英語ではエアレーターまたはエアディフューザーとも呼ばれていて、製造業や水族館など浄化槽が必要な場所では必須の設備となっています。

たとえば、機械製造や食品加工の工場などでは製造・加工過程で必ず汚水が発生するので、この汚水を一旦浄化槽に貯蔵しておき、汚水を浄化した上で排水する必要があります。
日本では、1960年代の高度経済成長期に工場廃液による公害が深刻な社会問題となった経緯もあり、工場排水に関しては法律で厳しく規制されています。
排水を貯蔵する浄化槽には汚水を浄化する微生物が生息しており、この微生物が生存するために必要な空気が散気管を通して送り込まれているのです。
また、水族館などでは水槽を泳ぐ魚や水生生物に酸素を供給するために散気管がエアレーターとして使用されています。
散気管の構造
散気管は、浄化槽や水槽などに空気を放出する設備ですが、単に管の中を空気が通っているだけという単純な構造ではありません。
微生物や水生生物という小さな生き物の生命を守り、正常に活動させるために、その構造はより複雑なものになってきています。以下、散気管の構造について解説します。
散気管の構造についての解説

散気管は、装置本体のポンプから圧縮空気がパイプを通して浄化槽または水槽に放出される構造になっています。家庭で観賞用として使われる金魚などの水槽には、泡がぶくぶくと立ち上る装置が備え付けられています。あれは、金魚がエラ呼吸するために必要な酸素を水中に溶かすための装置であり、家庭用の散気管装置ともいえます。
浄化槽の規模が大きくなればなるほど散気管装置も巨大になり、大規模な製造工場には、浄化槽の近くに巨大な散気管装置が設置されています。
散気管装置から空気を放出する際、管の放出口は網目状になっており、空気の泡を細かくする構造になっています。
これは浄化槽の微生物や水槽の魚類などが呼吸するために必要な酸素を効率的に水中に溶け込ませるために必要な形状なのです。酸素溶解率が高まることで、槽の生物の生存率が向上し、浄化の能率もアップするというわけです。
散気管の種類
ひとくちに散気管といっても、用途によっていくつかの種類があります。
ここでは、製造工場の浄化槽に使用される代表的な散気管装置の種類を紹介します。
散気管の種類について解説
メンテナンスフリータイプ
散気管における最大の課題である「目詰まり」を除去するためのメンテナンスを不要にした製品。エアレーター(換気装置)の強力な循環作用によって槽内底部に汚泥が沈殿せず、間欠運転も可能となっています。
処理能力が高く省エネ・エコを実現した「アクアブラスター」

散気管アクアブラスター
電気消費量の削減と高度な酸素溶解効率を両立させた画期的な製品。有機物の粉砕によって酸素呼吸の代謝を完全化することに成功しています。
イニシャルコストは高額でも、10年間交換不要でランニングコストの削減が実現します。
米国産のメンブレンタイプ
排水処理用として各国で使用されているメンブレン(薄膜)タイプの超微細気泡散気装置。メンブレンのラインナップが豊富なので、現場の状況に合った製品を選択できる点がメリット。省エネ効果も期待できます。
五角形型エアレーター
65cmサイズの五角形の筒が特徴。筒内で汚泥に空気を衝突させ激しく攪拌することで排水を効率的に浄化します。水深1m以上の貯槽であれば使用が可能です。開口部の経口サイズが大きく目詰まりが発生しにくいシンプルな構造です。
製造業における散気管の役割
製造業の現場において、散気管はどのような役目を果たしているのでしょうか?
散気管がどのように活用されているか、その実例について解説します。
食品加工工場の排水処理
食品加工工場では、排水に含まれるBOD(生物化学的要求量)とCOD(化学的酸素要求量)をいかに排除するかという点が課題となります。散気管装置は、BODとCODを除去することが可能で、水質汚染の防止と自然環境の保護に役立っています。
金属製品製造・加工工場の排水処理
金属製品の製造・加工工場では、油分を含んだ排水が問題となります。散気管装置では排水から油分を分離して処理するのでこの問題が解決します。
畜産排水の処理
畜産業の排水において、好気性処理法(微生物による有機物の分解)が散気管装置で実現できるので、生産効率の向上に貢献できます。
その他
- 既存の排水設備の汚泥量を削減し負荷も軽減
- 塗装ブース循環水の浄化と悪臭の除去
- ビルピット排水(ビル地下の排水槽)の浄化と悪臭防止
以上、製造業の能率を上げると同時に、散気管装置は地球環境を守り水質を浄化するという、重要な役割を担っている設備なのです。