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排水処理 納入ストーリー

第3話 廃プラ排水との死闘!

振り返れば、かなり壮絶な戦いではありましたが、この話の入口は、なんともヘンテコリンな話を耳にしたところから始まりました。

ある日、販売代理店のA氏から、「うちの若いもん(Tさん)が、ごっつい石を見つけてきたようやで!なんや桜島の火山灰土を練り上げて焼き固めた石らしいんやけど、汚水に入れておくだけで、水が浄化されるらしいわ!」 私は、すぐさま「そんなんインチキに決まってるやん!」と返しましたが、「いや、そうでもないらしいわ!なんや大学の偉い教授のお墨付きやそうや!」とあまりにも真剣な顔で言われるので、何も言えなくなりました。
そして、その代理店の大得意先である一部上場企業のN社が製造している廃プラリサイクルプラントの排水が処理できなくて困っているので、その石を使って水を浄化して、河川放流の基準値まで処理をするというのです。 流石にちょっと馬鹿馬鹿しかったのですが、頭から否定するのも失礼なので、様子を見守ることにしました。

その時の代理店の若い担当者Tさんの話です。
「ある業者が自信満々にこの石は廃プラ排水でも処理できると言い切るので、長野県のS株式会社の汚水タンクにその浄化できるという石を入れて一晩様子をみようということになりましてん。」
Tさんは、翌日にはどれだけ水がきれいになっているのか、その日の夜は本当に心底楽しみだったそうです。
そして、翌日…… 石の販売業者は、汚水タンクを覗き込むなり、「うわ~!とてもきれいになってますね~!」と感嘆の声を上げたので、Tさんがワクワクして続いて中を見てみると、昨晩とまったくな~んの変化も無く、汚れた水がそこにあったそうですが、業者があまりにもきれいになってると言い張るので、水処理素人の自分がおかしいのかなあと思ったそうです。 もちろん、その後の計量結果は言うまでもなく、まったく浄化されていなかったようです。

そこで、ようやくアイエンスに順番が回ってきました。同じN社の廃プラプラントを関西で保有している会社さんに無理を言って、散気装置アクアブラスターによる浄化実験を行ったところ、濃いネズミ色だった水が、48時間ほどで薄い麦茶のようになり、SS分も1/3以下で、見た目にも浄化されているのが分かるほどでした。 そして、N社でも試しに1件、実際に新潟の現場に導入してみようということになったのです。
その時に、念のため、新潟のプラントから排水を頂戴し、何度かテストを行いましたが、すべて良好な結果であったので、間違い無く処理できると踏んだのでした。 このときは、これが落とし穴だとは、まったく気付かずに……

処理装置のフローは、原水タンク→原水槽→調整及び前処理タンク→生物処理タンク→凝集反応槽→電気分解浮上槽というものでした。しかし、電気分解浮上槽をすすめてくれていた張本人が、注文が決まった途端に怖くなったのか、逃げ出してしまったのが最初のつまずきでした。
発注書が届いていたので、私は焦りに焦りましたが、どうしようもないので、電気分解浮上槽を見よう見まねで自分で設計することにしました。
一番難しかったのは電極板の設計で、何のノウハウも持たない私が懸命に電気分解やそれに使用する素材等を調べて、何とか目処が立つくらいになりました。 それも含め、製作全般のお手伝いをしてくれたのが、赤穂にある赤松工業さんで、本当に色々と手助けしていただきました。アイエンス製品が次第にステンレス製に移行したため、鉄専門の赤松工業さんとは少し縁が遠くなりましたが、この時の感謝の気持ちは、今でも足を向けて眠れないほどです。


平成15年頃というと、世間はまだ、それほど環境に関心は無く、N社でも廃プラリサイクルプラントの排水について、あまり深くは考えておらず、「なんとか騙し騙しいけるんじゃないの」という意見がほとんどでした。その中において、大平さんという、普段は非常に温厚な年配の技術者の方がいらっしゃったのですが、打ち合わせの席で、「汚い排水を放ったらかしにしといたらあかん!N社の信用問題ににかかわる。」と珍しく強い口調で、排水処理設備の併設を促されました。この時のこの言葉が無かったら、受注は無かったかもしれません。

プラントが完成し、無事に新潟に納めることができました。そして、いよいよ試運転の段になって、原水を入れることになりましたが、その時の水を見て、私は唖然としてしまいました。なぜなら、これまでサンプルでいただいていた水とは似ても似つかぬ、見ただけで恐ろしいほどの濃い色の排水が注がれたのでした。サンプル水が麦茶とすると、実際の水はコーヒー牛乳でした。もちろん負荷も高く、BODで8,800mg/L、SSはなんと15,000mg/Lという、排水というより廃液でした。

それを見たとたん、「話しが違いすぎますやん!」とN社の担当者に詰め寄りましたが、「泣き言は後で言え!取り敢えずやらんかい!根性見せてみい!」と突き放される言葉が返ってきました。正直私は、「こんな排水、処理できるわけないやん!これでアイエンスは終わったんちゃうかなあ……」と、またもや心底身体が冷たくなっていくのが分かりました。しかし、「根性見せてみい!」という言葉に、高校3年間野球部で鍛えた精神に火がつきました。「よっしゃ~ダメ元で根性見せたるやないか!」と。

とは言うものの、いきなり戦意を喪失する事件が起きました。やはり付け焼き刃、なんと電極板の陽極が、試運転開始後ほんの2~3時間で溶け出してしまったのです。設定した電流値が高すぎたのが原因でした。翌日には、無理を言ってスペアの電極板を新潟まで持ってきてもらいましたが、その日は夜を徹する作業となりました。チタンに白金メッキしてあったので、費用的も30万円の損失でした。前処理については、アクアブラスターを信じるしかありませんでした。処理を開始して24時間後、まだ水は浄化されていると言える状態ではありませんでした。


左から、コーヒー牛乳のような原水、
アクアブラスターでの生物処理水、凝集処理水

そして、迎えた翌朝。処理開始から48時間が経過していましたが、天に祈る気持ちで処理水をチェックすると、「うわー!生物処理がかかってる!!」この時の驚きと興奮は、今でも忘れることができません。

またまた、アクアブラスターと微生物および支えてくれた人たちに助けられ、命拾いをしたのでした。そして、PAC、高分子の凝集もうまくかかり、河川放流できるまでの水が出た時のことでした。胸の中で携帯電話が激しく震えています。ゴム手袋を脱いで、ようやく電話を取ったとき、思わず「え~っ!」と叫んで、足の力が一気に抜けてその場にしゃがみこんでしまいました。

電話をくれたのは、神戸に残っていたあのTさんで、内容は「大平さんが心臓疾患で突然死した……」とのことでした。
私は心の中で、「なんでや大平さん!約束通り水をきれいにしたのに……」その夜、食事の際にたいして飲めないお酒を飲んで、大平さんに処理した水を見てもらいたかったと思うと、思わず涙がこぼれてきました。


廃プラ排水で、もうひとつ苦労をしたのが、島津さんと同じ「発泡」の問題でした。散気管 アクアブラスターは本当によく働いてくれるんですが、元気が良すぎて、界面活性剤の多い排水の場合にはどうしても泡の問題がついて回るんです。当時の廃プラは前洗浄も無く回収されてくるために非常に汚れており、シャンプーや洗剤の容器の底には高濃度洗剤が残ったままだったのです。洗剤といえば界面活性剤ですから、思いっきり泡が発生して、タンクからビールジョッキ状態で泡が吹き出してくるのです。

解決策として、まず考えたのが、循環ポンプを放り込んで、シャワーで泡を消すという方式でしたが、シャワーノズルは数分で詰まるわ、高濃度洗剤の発泡速度にはとても追い付かないわで、みごと撃沈してしまいました。次に、シリコン系の消泡剤を投入したところ、たちまち泡が消えて喜びましたが、1時間おきに投入しないと再び泡が溢れ出てくることが分かって、これまた撃沈でした。またまた八方塞がりになって、うんうん考え込みましたが、私の出来の良くない頭では、シンプルに考えることしかできず、「もうしゃあない!あきらめて、あふれる泡を自然に回収しよう!」と割り切ったのです。泡回収用のタンクの到着を待って配管をつなぎ込みましたが、これが功を奏し泡立ちの問題はみごと解決したのです。そして、大きな副産物として、泡を排除すると水の浄化がさらに進み、凝集もかかりやすくなることが判明したのでした。界面活性剤が泡となり汚れを抱いて抜けてくれたためでしょう。ひょうたんから駒というか、失敗は成功のもとというか、当初は辛く大きな壁でしたが、本当にツイてるなあとつくづく感じました。

そんな苦労も報われ、最終的には、北は北海道の小樽から南は鹿児島の川内まで、各地に12プラントも納入させていただくことになりました。また、数が増えるごとに散気装置の完成度も増していき、最終的には、凝集システムのPH、水温、凝集剤添加量など水処理経験の無い人でも使えるまでの全自動となりました。本当にこのプラントで、「電気分解」「凝集」という処理方式を身をもって勉強させていただくことができました。
ちなみに、この排水を凝集沈殿で処理した場合、6t/日の排水に対して、汚泥が5t発生しますが、アクアブラスター ユニットタンクで処理すると、75㎏/日の汚泥しか発生しなくなりました。微生物の力って、本当にすごいですね!

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