10月 2011

排水の腐敗について

お客さんから腐敗と供給酸素量の関係について話しが上がりましたので、これまでの経験から少しお話しさせていただきたいと思います。

「BOD負荷からすると、十分に空気量は足りているはずなんだけど処理がうまくいかない・・・」

よく聞く話です。そうした現場は決まって腐敗臭が漂っています。
そうした現場の方は、下水道処理のガイドライン(排水処理の教科書)をしっかりと把握された、非常に真面目な方が多いのではないかと思われます。根が不真面目であまのじゃく、学生時代から教科書嫌いの私は、そうした面倒くさいことを一切避けてきましたが、現在アクアブラスターをご使用いただいている現場では、『まったく腐敗臭はしない』といっても言い過ぎではないと思います。それは、教科書ではなく受注した現場で大失敗して、徹底的にイヤというほど思い知らされたからの結果です。

以前にK食品さんでの苦しんだ話しを書かせていただきましたが、慣れない当初は不安もあったので元大手水処理メーカーで設計を行っていた方に設計を依頼させていただきました。上がってきた図面をみて、明らかに調整槽の散気管が少ないなと思い尋ねてみると、「BOD負荷からするとこのエア量で絶対に腐敗しない!」と自信満々だったので、安心して任せることにしました。

いざ試運転が始まり、その2日後には、「調整槽が腐敗してきた!」とお客様から呼び出されました。現場に到着すると、確かに腐敗臭が周辺にまで立ち込めていました。

「腐敗臭はしないという話しだっただろ!!」と担当者にこっぴとぐ叱られ、すぐさまアクアブラスターの増設とブロワの風量アップの改造を行わせていただきました。設計者にクレームとしてその件を伝えても、「そんなはずはない。計算通りだ!」と一点張りなので、仕方なくうちの負担で改修工事を行い、なんとか問題解決に至りました。

そのときの状況ですが、BOD:2000㎎/L、SS:1500㎎/L、n-hex:300㎎/L前後の排水に対して、腐敗していた時のエア量は、『37.5L/min/m3』でしたが、『60L/min/m3』に増量することで腐敗しなくなりました。
しかし、それでもエアの不足感は拭えず、体感上最低でも、『70L/min/m3は必要だな』とその時感じました。

その後、現場主義の同業者と情報交換の中で、水処理が上手くいっている現場のエア量は、『80L/min/m3』以上だよねという会話を耳にしましたが、本当にそうだと思いました。

80L/min/m3だと多すぎると言われる方もいらっしゃいますが、最近では、最先端の大手水処理業者さんでも、90L/min/m3以上で設計されているのが実情です。私の考えは、水処理は一旦始まってしまうとなかなか改造も難しいので、多少の過剰設計でも構わないと思います。

と言いますのも、『省エネや何よりも処理がまず優先』と思っているからです。
処理が設計以上に上手くいって過剰設計と思われるなら、あとでブロワをインバーター制御したり、タイマーで間欠運転したりすることで、省エネもできますし、何とでもコントロールできるからです。実際に、アクアブラスターを導入していただいている路線バスの洗浄や整備を行っている整備工場の鉱物油排水処理の現場のブロワの稼働時間は、1日に10時間しか動いてないんです。

以上、参考になりましたら幸いです。
(微生物と酸素の関係は、過去の9月14日の微生物(バイオ)についてをお読みください。)

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どうして水膜で脱臭するのか?

最近、バイオデオライザーの臭気物質や塵埃の捕捉能力を高く評価していただけるようになりました。では、どうして他のスクラバーよりも捕捉効率が高いのか、ミクロの世界を現実的なサイズに直してご説明させていただきます。
通常、捕捉したい臭気物質の大きさは、1~10ミクロン程度ですが、それを叩き落とすシャワーの水の粒径は、いくら頑張っても150ミクロンほどにしかなりません。これをミリメートルに直しますと、ジンタンか銀玉鉄砲の玉をソフトボールで当てて落とすようなイメージになります。
ということは、ほとんどの物質が水に接触せぬまま抜けてしまうということなのです。

仮に、接触効率を上げようと充填材を積み重ねても、充填材の隙間を5ミリとし、上記の割合で換算しますと、隙間は5メートルにもなることがわかります。
アイエンスも昔は、充填材からスタートしましたが、お客様の満足を得られないことがよくありました。
塔内通過速度も必要以上に遅くしているのに思ったような捕捉効率が得られないことから、試行錯誤を重ねて、現在の水膜形成に辿り着くことができました。
しかし、上記のヒントをくれたのは、シャワーノズルメーカーの担当者さんでした。

「水の粒径はいくら小さくしても150ミクロン、霧の粒径にしても40ミクロンですから、1ミクロンのものを捕捉するのは至難の技ですよ!」と、さもすれば、シャワーノズルが売れなくなることを覚悟で教えてくださいました。
もちろん、シャワーノズルは、品番こそ変更しましたが、いまだに採用させていただいております。
バイオもそうですが、目に見えないミクロの世界になると、なかなかイメージがつかみにくいものですね!

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「容積負荷」について

 「容積負荷」?・・・一体何のこと、と思われる方も多いと思いますが、水処理を行う際に、処理水槽1立方メートルあたり1日で処理できる負荷量を表したものです。
注)今回は、ちょっと難しい話しになるので、「容積負荷」に興味のある方だけご覧ください。(私なら読まないかも ^^;)
水の汚れは、BOD(生物化学的酸素要求量)やSS(浮遊物質)、ノルマルヘキサン抽出物質(油分)といった指標があり、それぞれ「㎎/ℓ」と容積に対する質量で表されます。
例えば、排水量が100/日で、BODが1,000㎎/ℓであれば、
100×1,000㎎/ℓ=100,000㎎/日で、キログラムに換算すると、1日に100㎏のBOD成分が発生しますということになります。
その100㎏のBOD成分を200tの処理水槽で処理できた場合、100㎏÷200㎥=0.5㎏/となりますので、処理水槽1立方メートルあたり、0.5㎏のBOD成分が処理できたと言えるのです。
わかりやすくするためBODだけを取り上げましたが、その他のSSなども総合的に含めた負荷を処理する必要があります。
従来、公共の排水処理は、有名な「活性汚泥法」で処理されていますが、その際の容積負荷は、平均で0.5~0.6㎏総合負荷//日となっております。
しかしながら、アクアブラスターの処理につきましては、逆算しますと最大で2.6㎏//日も処理できている実際の現場があります。(ちなみに、固定床などの微生物担体は使用しておりません。)
従って、活性汚泥法のおよそ5倍の負荷を消化していることになります。
このようにアクアブラスターを使用することで、容積負荷を上げることができるので、水槽サイズを小さくすることが可能になるのです。
お分かりいただけましたでしょうか?分りにくければ、ごめんなさい!

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バイオについて その2

さぼりさぼりのブログにも関わらず、結構たくさんの方にご覧いただき、本当に有難うございます。

先日、排水処理設備(除外設備)の申請を行うため、アクアブラスターの排水処理方法の説明に、エンドユーザーさんと某役所さんに行ってまいりました。
ひと通り排水処理のしくみをお話しさせていただきましたが、納入実績が多いことと、硫化水素が発生しないことに非常に興味を示され、「アクアブラスターとバイオだけで(下水道放流までの)処理ができるなど、にわかには信じることが難しいけど、これだけ著名な会社にこれほど多くの設備が入っており、成果もでているので認めざるを得ない。」とおっしゃっていただきました。
そして、最後に、「このバイオは特殊なものですか?」と尋ねられましたが、私がすぐさま、「いいえ!特殊なバイオではありません。正直なところ、バチルス属など通常の浄化菌がいれば大丈夫です。」と答えさせていただきますと、「そうですか!それで余計に安心しました。」とご返答されました。
結局、これまで排水処理ができなかった業者の常套句が、『特殊なバイオ』だったようです。
さらに「あくまでもバイオの種類ではなく、『バイオが好気呼吸の代謝を行っているかどうか』ということが重要なのです」と申しますと、さすがにかなりお詳しい担当者さんのようで、「よくわかりました。これで計画を進めてください。」とGOをかけてくださいました。
アイエンスを立ち上げて10年。これまで辛いことがたくさんありましたが、ようやくアクアブラスターの排水処理が日の目をみるときが近づいてきたのかもです。
この技術は、ブロワさえ回しておけば、あとは自動でバイオを供給していくだけの設備なので、電気さえ確保できれば、メンテナンスが苦手な海外では非常に役に立てるのではないかと考えています。

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